明治の初めころのことです。観音寺に祀られている 聖天さんの像が秘仏なのは黄金だからという噂がひろがりました。
これを聞きつけて一人の泥棒が盗みに入りました。しかし聖天さんは浴油供という毎日のお勤めによって、ごま油をかぶって真っ黒でした。
泥棒は刀で聖天さんが立っておられる蓮華の葉に傷をつけてみました。キラリと光りました。ホワイトゴ−ルドだなんてわかるはずもありません。
黄金の光だと思うと、しめたとばかりにその像を背負うと、まんまとお堂を抜け出しました。その刀傷は今でも残っているそうです。
さて、その泥棒があの高い石段のところまで来ると、聖天さんが急に重たくなりました。アレアレどうしたんだろうと思っているうちに、泥棒は腰が抜けて動けなくなってしまいました。
そこへ、物音を聞きつけて、和尚さんや小僧さんが駆けつけて泥棒を取り押さえました。 そして、聖天さんはめでたくお堂へお帰りになりました。 |