円明寺小字山伏の田圃のなかに、ポッカリと浮かぶ直径30m程の円形の森があり"大日の森"といわれる。その森の中央には、東向きに石像の大日如来が鎮座しておられる。鎌倉時代の石仏とも言われているが、何時のころからこの地に祀られたかは不明である。
その昔、江戸末期の天保(1830〜44)の頃、円明寺村で農業を営む兵左衛門の家が火事で焼けた。どうして家を建て直そうかと思案の末、先祖代々耕してきた山伏の土地を同じ村の弥衛門に買ってもらったところ、弥衛門の枕元に毎晩大日如来が立つようになった。そして「弥衛門、早う返してくれ。弥衛門、早う返してくれ」とおっしゃった。
兵左衛門が手放した土地のなかに山伏の塚という小さな森があり、この中に大日如来の石仏が祀られていた。この大日如来の毎夜の出現に気味が悪くなり、崇りでもあると恐ろしいので、元通り兵左衛門の所有地とした。今でも毎朝この家の人が供養されているとのことである。
また、この森の柿の木を切ったために災難にあったという話や、不治の病にかかり医者からも見放された村人が、大日如来に日参したお蔭で完治した話等が伝えられている。粗末にすると崇りが恐ろしいが、大切に祀っていると願いを叶えてくださるということで、いつしか「大日さん」の呼び名で親しまれるようになったという。
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